お兄ちゃんと仲が悪いわけではないし、嫌いなわけでもない。
むしろ、もちろん、好きだと思っている。
お兄ちゃんのほうも、ヘナチョコの妹に意地悪したり、からかったりしてくることはあっても、決してわたしを嫌っているわけではないと思う。
でも、人当たりの良さも、頭の良さも、運動神経の良さも、わたしは全部、お兄ちゃんに持っていかれてしまった。
お兄ちゃんは、持てる分を全部かっさらって、わたしの分け前を、ママのお腹のなかに、なにひとつ残しておいてくれなかった。
小学生の頃、お兄ちゃんを担任していた先生に、すぐ翌年、クラスを受け持ってもらったことがあった。
そのとき彼女から投げかけられた言葉を、わたしはずっと、忘れられずにいる。
――“悟朗くんが一番茶なら、なな子ちゃんは、出涸らしね”
当時は幼くて、なにを言われているのか、よく理解できなかったけど。
家に帰ってから、言われた言葉の意味を知って、ものすごくショックを受けたのだ。
そのときからひそかに、出涸らし、というのが、わたしの最も苦手な単語になってしまった。



