わたしがしゃべり終えると、たちまち沈黙が落ちた。
すごく居心地が悪かったけど、これ以上を話す気力など、もうどこにも残っていない。
「……まあ、たしかに」
先に口を開いたのは、久遠くんのほうだった。
「きなこちゃんの言い分にも、一理あるかもな」
なぜか、目の前に、紙パックのコーヒー牛乳が差しだされている。
学校の自販機に売っているこれを、転校3日目にたまたま飲んで以来、いたく気に入ったらしく、久遠くんは毎日、数本ずつ買いだめしているらしい。
「じゃあ、きなこちゃんが、俺の“友達”になってよ」
「……え?」
「かわりに俺が、きなこちゃんの“友達”になるからさ」
ん、と。
今度は、紙パックを軽くわき腹にぶつけられたので、おずおずと受け取るしかなかった。
満足そうに笑った久遠くんが、顔を傾けながら、無遠慮に瞳を覗きこんでくる。
「俺が他のヤツらに昼誘われてるとき、きなこちゃんさ、超不安そうな顔してただろ」
「ええっ? そんなことないよ」
「いいや、してたね」
「あれは、だって、久遠くんからの無言の圧力が……」
「ばーか。違うだろ」
ばか、て。
お兄ちゃん以外の人から、こんなにナチュラルに言われたの、生まれてはじめてかもしれない。
でも、悪意や蔑みの感情などはいっさい見えず、どちらかというと親しみの温度がこもっているように思えてならなかったから、不思議と嫌な感じはしなかった。



