教室から、旧校舎へ続く渡り廊下まで、無言のまま歩いた。
そのあいだ、久遠くんは手を離してくれず、わたしも振り払う勇気などないので、なぜか、ずっと、指先は繋がったままだった。
もはや定位置と化している、段差のところに、並んで腰かける。
とたん、頬を撫でていく、ひんやりとした空気。
最初のうちは恐ろしく感じていたこれも、慣れてこれば、いつのまにか心地のよい春風である。
「てか、べつに、俺が誰とどこでメシ食おうが関係なくねえ?」
あからさまにご機嫌ナナメの横顔が、わざとらしく口をとがらせながら、突然ぶうたれた。
サンドイッチを取り出している手つきが、いつもの数倍は乱雑だ。
それを横目に、わたしも膝の上にお弁当を広げながら、思わずほんの少しだけ、憤り、みたいな感情がこみ上がってきてしまう。
「でも……みんな、久遠くんと仲良くなりたいんだよ」
「俺はべつに仲良くなりたくねえもん。こっちの気持ちはガン無視かよ」
「そう言う久遠くんだって、みんなの気持ち、“ガン無視”してるじゃん」
勢いで口をついて出た言葉に、久遠くんが目を見張るのがわかった。
でも、わたしは、彼と同じように、相手へ目線をむけることはできなかった。



