「ふ、普段はね! もっと……その、普通の、お弁当なんだよ? きょうは2年生になってはじめてのお弁当だったから、こんな出来になっちゃっただけで……」
どうでもいいわたしの言い訳など、久遠くんの耳にはいっさい届いていないようだ。
彼は何度も、「すげー」とか、「かわいい」とか、ひとりごとみたいにブツブツ呟きつつ、ずっと目を輝かせたまま、ピンクの箱をあらゆる角度から見つめている。
「……あの。そろそろ食べてもいいかな」
「ええ? こんなにかわいいのに食べんの? もったいねー」
本気のトーンで言うので、思わず笑ってしまった。
「えと、ありがとう。そんなに褒めてくれて、……すごくうれしい、です」
ちゃんと謙遜するべきか、とても悩んだ。
でも、自分でも意外なほど嬉しくて、そんな言葉はひとつも思い浮かばなかったので、こう言うほかなかった。
だって、ひょっとしたらわたし以外の誰にも見てもらえないのかも、なんて、どこかで寂しく思っていたから。
新しいお弁当箱も、頑張って作ったおかずも。
こんなふうに、誰かが見てくれて、それどころか褒めてもくれるなんて、今朝まで、想像さえしていなかった。



