だけど、わたしは冗談抜きでホラー系が苦手なのだ。
正直もうお弁当どころではないし、情けないことに、泣いてしまいそうですらある。
「大丈夫だよ、きなこちゃん。俺がいるじゃん」
自信満々に言いながら、首を傾げた久遠くんの額に、はちみつ色の髪がさらりと流れた。
陽の光が当たっていないのにもかかわらず、穏やかでも、たしかな輝きを帯びているそれは、どこか神聖なものにさえ見える。
「……久遠くん、ひょっとして、オバケと闘える能力があるの?」
「え? それはない、普通に」
こちらも本気で訊ねたわけではなかったけど、あまりにあっさり否定されたので、ずっこけそうになった。
「でもさ、ひとりぼっちだとキツくても、誰かと一緒なら怖くないことって、けっこうあるじゃん」
「……その“誰か”が、怖いことばっかり言ってくるのは、気のせい、でしょうか」
「あーね、はいはい、わかりました、もう言いませんよーと」
そこでやっと、退屈そうにおどけた久遠くんの左手が、わたしの右手首を解放してくれた。
とたん、冷たい風が、すす、とその場所をかすめていく。
「てか、お腹すいたし、ごはん食べよ」
なんという切り替えの早さなの。
まだ多少の恐怖を引きずっているわたしなど置いてけぼりにして、久遠くんはさっさと視線を落とし、自分のランチボックスを開きはじめてしまった。



