きみは宇宙でいちばんかわいい



「ぼくは、ずっと、こういうかわいい自分を気に入っていました。それでいて、そのことに負けないくらい、男として生まれたのも気に入っていました。同じように、かぎりなく日本人に寄った顔立ちに誇りを持っているし、イギリスの血を引いた髪と瞳の色を、愛しく感じています」


そこで、いちど言葉を止めた彩芭くんが、かすかにくちびるを結んだのがわかった。

まるで、なにかをためらっているようなしぐさ。


それでも彼は、小さく息を吸うと、すぐに口を開いたのだった。


「だけど、ぼくが持つ、このすべてのせいで、嫌な思いをすることもたくさんあります。イギリスでは、アジア人だとからかわれることもあるし、日本では、外国人として、腫れもの扱いされることも多い。日本人の祖父からは、『男らしくあれ』と言われるのに、イギリス人の祖父からは、『可憐であれ』と言われる」


体育館は、ほかの音をいっさい排除したかのような静けさで、ただ、彩芭くんの声だけを、妙にありありと響かせている。


「そうしているうちに、ぼくは、どんどん、わからなくなっていきました。生まれたときは自分をすごく気に入っていたはずなのに、いつのまにか、こんな自分が、嫌いでしょうがなくなってしまった。ぼくは、イギリス人としても、日本人としても、男としても、永遠に完璧にはなれなくて、ずっと欠陥があるままなんだろう……って」