きみは宇宙でいちばんかわいい



そうしているうちに、いきなり会場の照明がふっと落ちた。


一瞬にして喧騒の消え去った体育館を泳ぐように、ゆるやかに流れはじめたのは、なんとも優雅な弦楽器の音。

やがて、舞台袖から小宮山朝香ちゃんが現れると、ため息のような歓声が、あちこちから次々と上がった。


これは――クラシック・バレエ?


いかんせん、詳しくないから、何の演目なのかはよくわからない。

それでも、どこかで耳にしたことのある優美な音色と一体化しながら、朝香ちゃんは艶やかに脚を伸ばしたり、軽やかに跳ねたり、華麗に回ったりした。

その表情は、終始、凛としていて、果てしなく、美しかった。


彼女に魅了されつづけていた10分のあいだ、自分がまばたきをできていたのかどうかさえ、定かでない。

朝香ちゃんのステージが終わり、体育館が本来の明るさを取り戻しても、わたしはその場から動くことができなかった。


「……すごかったな、小宮山さん」

「うん、ほんとうに、すごかった……」


柊くんもかなり感動したようで、ふたり揃ってぼけっと客席についたまま、とりとめのない会話をいくつか交わすので、もう精いっぱいだ。



「――ななちゃんっ。それに、織部くんもっ」


そうして、いったいどれくらいが経っただろう。

ほとんど放心状態のわたしたちのあいだに、ポコンと元気な声が落っこちてきて、やっと我に返る。


ふり向いた先にいた小宮山朝香ちゃんは、さっきまで舞台の上で踊っていたのと同一人物だとは思えないほど、チャーミングに笑っているのだった。