アピールタイムは、ひとりにつき10分の持ち時間があり、候補者たちは、それをどのように使ってもいいことになっている。
ただし、その内容はいっさい他言無用で、知っているのは本人と、運営している文化委員の一部だけ。
だから、朝香ちゃんや彩芭くんが何をするのか、わたしはまったく知らないし、もちろん、その逆も然りなのだ。
「ななが緊張してどうするんだよ」
朝香ちゃんのステージが始まる直前、どうにも落ち着かず、時計を気にしたり、指先を弄んだり、そわそわしていると、隣に座る柊くんが呆れたように笑った。
「そんなこと言ったって、緊張しちゃうものはしょうがないよ……」
「小宮山さんも、久遠も、ななよりは大丈夫だろ」
「……それってどういう意味なの」
「そのまんま」
柊くんがめずらしく意地悪なことを言った。
横顔を見上げても、にやりとするばかりなので、むっとしてしまう。
でも、そのおかげで、けっこう肩の力が抜けたような……。
「絶対大丈夫だから、とにかく、見守ろう。そんで、楽しもう」
そんなわたしの様子を察すると、柊くんは少し表情を崩して、笑ったのだった。
なるほど、こうなることをわかって、わざと意地悪を言ってきたんだな。
やっぱり、柊くんって、どこまでも優しい人で、ずるい。



