「えと……ここでごはん、食べるの?」
「うん。日陰で涼しいし、誰もいなくて、ちょうどいいじゃん」
「そうかなぁ……」
「うん、そうだよ」
わたしの意見になど耳を傾けるそぶりさえなく、渡り廊下と旧校舎とを繋ぐ段差に、とうとう久遠くんはどかりと座ってしまった。
仕方がないので隣に腰かけてみる。
ひんやりとした温度が、スカート越しにお尻へ伝わってきて、ぞわりと鳥肌が立つ。
「静かで、いいな」
静か、の度合いをはるかに越えているような気がするのだけど。
それでも平静を装い、ソウダネなんて相槌をうちながら、膝に置いたお弁当箱の蓋を開けようとした、そのとき。
いきなり、右の手首を掴まれた。
「…………っ、!?」
「きなこちゃん、もしかしてビビってんの?」
悲鳴すら上げることができなかったわたしに、久遠くんはからかうみたいに、そう言った。
「び! びびって、なんか!」
あわてて取り繕うも、意味なし。
顔を覗きこんでくる久遠くんは、おもしろがっているのを隠そうともしないで、にやにやと口角を上げるばかりだ。
「へー? ま、けど、たしかにちょっとオバケ出そうな雰囲気あるもんな。俺らの後ろ、旧校舎の中から、誰か見てるかもしんないし……」
「なっ、んで……、そういうこと、言うの?」
「なあ、ちょっとふり返ってみてよ」
「ねえ、久遠くん、ほんとにやだ」
人の気も知らないで、ぷくく、なんて笑っている。



