肩甲骨のあたりまであるジッパーを、丁重に引き上げてくれた朝香ちゃんが、背後で盛大なため息をついた。
「はぁ。さすがに、緊張しちゃうね……」
思わずふり返ってしまう。
ミスコンの出場者が決定した日、瀕死だったわたしとは裏腹に、いまから楽しみだとニコニコしていたのが印象的なので、意外な発言にびっくりしたのだ。
「え。朝香ちゃんでも、緊張するの?」
「ええっ? ななちゃん、わたしのこと何だと思ってるの?」
なにって、今年のミス・コンテストの、優勝候補である。
去年は、2学年上だった3年生の先輩が優勝して、朝香ちゃんは準優勝だった。
だから、その先輩が卒業してしまった今年は、当然のように小宮山朝香ちゃんが優勝するだろうと、全校生徒が噂していることを、彼女自身も知らないはずがないと思う。
「ハチャメチャに緊張するよぉ。こう見えて、けっこうあがり症だよ」
「ええっ、うそ、知らなかった。ぜんぜんそんなふうに見えないよ」
むしろ、どちらかというと、こういう華やかなステージを好んでいるほうなのかと思っていた。
そう率直な感想を伝えると、朝香ちゃんは眉を下げ、泣き真似しているみたいな、どこか気弱な表情を浮かべた。



