後方の器用な指先に意識が引っぱられないよう、前方の鏡に集中した。
アイシャドウを載せたり、アイラインを引いたりするのも、断じて得意なほうではないけれど、なにより、アイブロウを描くのが実はいちばん苦手なのだということを、最近はじめて知った。
必死に色づかせている顔が、なんとか完成に近づいてきた頃、髪もまた、出来上がりつつあるようだった。
毛先が大きく巻かれている、華やかなハーフアップ。
後頭部の結び目は、こちらからは見えないけど、編みこんでくれたみたいだ。
仕上げとして、髪全体に、ヘアバームまで擦りこんでくれている。
その手が、ふいに視界に入ってきて、あ、と思う。
「ねえ……彩芭くんも、同じ色にしたの?」
「え、なに?」
「そのネイル……」
「あ、うん。ばれた?」
鏡越しに、手の甲をこちらに向けながら、彩芭くんがニッと笑った。
「きなこちゃんとおそろいのラベンダー、なんとなく、お守りになる気がして、俺も塗ってきちゃった」
彼が、どちらにとってそういうふうになると思ったのか、この文脈だけでは、なかなか読み取ることができない。
でも、少なくとも、いまのわたしは、おそろいのすみれ色から、たしかにパワーを貰っていた。



