それでも、彩芭くんのそんな突然変異など、いまの柊くんにとっては些細なことなのかもしれない。
彼は、困ったようにガシガシと頭を掻くと、少しだけ首をひねるようなしぐさをした。
「なんで、言わねえんだよ。姉ちゃんの店で何回も顔合わせてただろ」
「そっちが気づかなかっただけじゃん。それなのに、わざわざ俺のほうから名乗り出る必要ねーよ」
たしかに、彩芭くんの言うことにも、一理ある。
でも、柊くんは、たぶん、この姿でいる彩芭くんを女の子だと信じて疑うことなく、恋心まで抱いていたんだよ。
それなのに、ピシャリとそんなふうな物言いをされてしまうのは、客観的に見て、少し気の毒な気もする。
「……ていうか、それは、なに? 普段からしてんの?」
「んー、まあ、たまに? 趣味みたいな感じで」
「でも、体と心は、男……なのか」
「そうだよ」
「あ、そう……。視覚と聴覚の情報が一致してなくて、脳の処理がなかなか追いつかねえわ」
柊くんは困り果て、すっかり疲弊しているようだった。
彩芭くんは、そんな彼を見上げ、左側の口角をちいさく上げている。
「ところでシュウクンは、きょうのミスコン、きなこちゃんと俺のどっちに投票してくれんの?」
「えっ!?」
突拍子もない質問に対して、声を上げてしまったのは、わたしだ。



