「きなこちゃん、一緒に帰ろ」
「なんで? わたし、いま、ちょっと怒ってるんだよ」
「怒ったって、決まっちゃったもんはしょうがないじゃん。ミスコンの準備、俺が手伝うからさ」
「……やっぱり、わたしのこと推薦したの、彩芭くんでしょ」
「えー? だって、ここで肯定したら、推薦者が匿名になってる意味ねーじゃん」
その言葉こそが、肯定そのものなわけで。
絶対、わかってやっているな。
楽しそうにからからと笑っている横顔を見つめながら、声を荒げて怒りたいような、大声をあげて泣きたいような、やさぐれた気分になる。
「ねえ、今回ばっかりは、本当の、本当に、嫌だった。お願いだから、からかうのも大概にしてほしいよ」
「だーから、からかってねーって」
そんなの噓っぱち。
柊くんから、体育祭での全部を聞いて、知っているんだから。
やっぱりわたしのこと、からかって、遊んで、楽しんでいることくらい、ちゃんとわかっているんだから。
「きなこちゃんは、なんも心配しなくていいよ」
金色の髪をきらめかせながら、こちらをふり向いた彩芭くんが、自信ありげに左の口角と眉を上げた。
「見とけって。俺が文句なしのグランプリ獲らせてやるから」
そんなもの、わたしはぜんぜん、欲しくないのに。
ただ、静かに、穏やかに、何事もなく、学校生活を送りたいだけなのに。
聞こえていてほしいと思って、なかなか大きなため息をついたのに、彩芭くんは気にも留めず、軽い足取りでどんどん進んでいくのだった。



