「わたしね、去年、仲良い人が誰もいなくて寂しかったから、友達といっしょなの、本当に嬉しいの。ななちゃんのこと推薦してくれた人に、もう、めちゃくちゃ感謝したいくらい」
みんなの憧れの小宮山朝香ちゃんに、ぱっと手を取られたかと思えば、ぎゅっと握りしめられている。
おまけに、そんなせりふまでくっつけられたら、心がじーんと震えて、もうなんでもよくなってしまった。
「うん、それならわたしも、楽しみだなぁ……」
ほだされているとわかりながら、彼女の纏うあまりの神々しさにつられて、気がつけば同意していた。
「ていうか、ほんとに、誰なんだろうね? ななちゃんのこと推薦してくれた人」
「んんっ? 誰だろうね?」
「ねえ、少しも見当つかないの? あっ、ひょっとして、織部くんだったりして! ねえ、もしそうだったら、どうする?」
どうするも、こうするも、本当は、だいたいの見当ならついているので、なんとも言えない。
朝香ちゃんが去っていったあと、不自然に教室の端っこに残っていた彼に目をむけると、案の定、ばっちりと視線が合ったのだった。
「……どうせ、彩芭くんなんでしょ」
「え、なにが?」
む、と睨みつけても、いつも通り飄々と笑うだけだ。
久遠彩芭くんは、白々しい、とぼけた顔をしながら、軽快なステップでわたしの元へやって来た。



