「なら、いいけど……。ごめん、俺、なんにも気づけなくて」
「ええっ? なんで柊くんが謝るの?」
「だって、ななが膝から崩れ落ちたとき、マジで心臓止まるかと思ったんだよ、俺は……」
本当に沈痛な面持ちで言うから、こっちがびっくりしてしまう。
いったいどこまで優しい人なのだろう。
彼の持つ特別なそれを、昔から変わらずに向けてもらえていること、とても嬉しいと思うのは、いまでもたしかな気持ちだ。
でも、柊くんに好きな人がいると知った日から、わたしはずっと、この優しさを、純粋に受け取れないままでいる。
「あと、俺が最初に駆けつけられなかったのも、けっこう悔しかった。久遠、あいつ、どんだけ足速いんだよ?」
「ねえ、やっぱり彩芭くんとなにか張りあってるの? きょう、ずっとそんな感じだね」
白熱した闘いの数々を思い返して、思わず声が弾む。
じゃれあっているだけなら可笑しいし、本当に喧嘩をしているなら仲裁しなければならない気がしたので、どちらに転んでもいいよう、わざとライトに言ったのに、柊くんはなにか思いつめたように、なぜか眉をひそめてしまった。
「……なな」
そして、どこか神妙な声で、わたしを呼んだ。
なんだかまじめな響きだったので、ベッドのなかにいるにもかかわらず、背筋がシャキッと伸びる感じがする。



