「ななちゃん、大丈夫!?」
「う……」
すさまじい吐き気と引き換えに、遠のきつつあった意識が、なんとなく戻ってくる。
なんとかして右側を見やると、しっかり足が繋がっているおかげで、朝香ちゃんまで体勢を崩してしまっていた。
そして、視界のピントが合ったとたん、ぎょっとした。
彼女の、白い、とても綺麗な肌に、赤いものが見えたのだ。
大きく膝をすりむいている。
どう考えてもわたしのせいだった。
いっきに血の気が引いていく。
「……朝香ちゃん、怪我、して……」
「こんなの大丈夫だから! ななちゃんこそ、大丈夫?」
大丈夫だよ、と答えようとしたそのとき、わたしたちの前に、別の影が落ちてきた。
「――きなこちゃん!」
とても、切羽詰まったような声。
綺麗な顔を歪めながら、こちらを覗きこみ、息を切らしているのは、みんなの前でわたしの呼び方を矯正するのさえすっかり忘れているらしい、久遠彩芭くんだった。
「あ……彩芭くん、朝香ちゃんが怪我してるの。だから、そっちのほう、見てあげて。わたしはぜんぜん大丈夫だから」
「なに言ってんの? 大丈夫なわけねーだろ」
なぜか少し怒ったように言いつつ、彼がこちらに差し伸べてくれた手。
「ほんとに、大丈夫だからっ……」
それを、わたしは反射的に、おもいきりふり払っていた。



