「おはよう、木原さん。勝手に座っちゃってごめんね?」
「っえ、あさ、――」
思わず馴れ馴れしく名前で呼ぼうとしてしまい、すんでのところで踏みとどまる。
わたしの席に座っていたのは、なんと、学校で1、2を争うほどの超有名人・小宮山朝香ちゃんだったらしい。
誰もが認めるほどの美少女で、スタイルも良ければ、色素の薄いロングヘアもすごく綺麗。
おまけにスポーツ万能、そして性格もすごく良いときて、更にはお家もかなり裕福なのだとか。
ちなみに、トップの成績で受験をパスしてきたという彼女は、一年前の入学式で、新入生代表としてスピーチをした人物でもある。
マルチタレントな“朝香ちゃん”の噂は、教室など軽々飛び越え、かと思えば階層を越え、すぐさま学校中に響き渡った。
わたしは、去年は違うクラスだったけど、もちろん、一方的に存じ上げているわけで……。
「え、と……小宮山さん、おはよう。……あの、ごめんね、どいてくれて、ありがとう」
「ううん、わたしのほうが勝手に座っちゃってたんだよ。こっちこそ、ほんとにごめんね」
クラスどころか、学年どころか、学校のヒエラルキーの頂点に君臨している女神のような存在が、わたしみたいな下々に頭を下げるなど、あっていいはずがない。



