「……久遠くんって、やっぱりななちゃんのこと、気になってるのかなぁ」
自身の左足と、わたしの右足とを、はぐれないよう手ぬぐいで縛りあげたあと、地面を見つめたままの朝香ちゃんが、ぼそりとこぼした。
よかったら二人三脚でペアを組もう、と。
体育祭の準備期間のうちから、そう誘ってくれていたのは、朝香ちゃんのほうだった。
わたしみたいなのが、みんなの憧れ存在と一緒に走るなんて、とんでもないことだと思っている。
ましてや運動神経も雲泥の差なわけで、文字通り朝香ちゃんの足を引っぱらないよう、自分なりに練習を重ねたつもりだけど、ぜんぜん自信がないし、スタート直前のいまになっても、緊張が抜けてくれないままだ。
「お昼ごはんも、絶対ななちゃんとふたりがいいみたいだし、遠足のときだって、結局いっしょに集合場所に戻ってきたでしょう? それに、テスト前も、ななちゃんを頼ってばっかりだったし、さっきの借り物競争でも、“かわいいもの”で、ななちゃんを連れて行くって……」
それでも、彼女のその言葉を聞いたとたん、いっきにそれどこではなくなってしまった。
朝香ちゃんは、かなり思いつめたような横顔をしている。
さすがにこのまま黙っているわけにいかず、あわててわたしもしゃがみこみ、思わず、宙ぶらりんになったままの美しい手を握った。



