あまり大きな声を出さないでほしい、と、反射的に思ってしまった。
そんな音量でしゃべったら、さっき彩芭くんの噂話をしていた女性たちのテーブルに、聞こえてしまう。
ああ、いまのやり取りは、どんなふうに思われたのだろう。
いま、わたしたちは、周りの目に、どう映っているのだろう。
「どう? さすがに受けとってくれるっしょ?」
「……、ない」
「え、なに」
「いらない、です」
ぎゅっとうつむき、とにかく夢中で、大きくかぶりを振りつづけた。
「……なんで? 気に入らなかった?」
彩芭くんは、いつもとぜんぜん違う、明らかに元気のない声でそう訊ねてきたけれど、それでも顔を上げることはできない。
「ちがう、そんなの絶対、わたしなんかに似合わない、から」
「俺が似合うと思ったんだから、絶対大丈夫だって」
「ねえ、彩芭くん、からかうのも、お願いだから、いいかげんにして」
「だから、からかってねーよ」
「わかってるの!」
膝の上に置いている手のひらを、爪が食いこむまで、強く握りしめずにいられなかった。
「彩芭くんは、わたしの反応が、いつも、おもしろいんでしょう? 困らせるのが、楽しいんでしょう? だけど、彩芭くんは、わたしなんかといっしょにいるべきじゃないと思うよ。こんなの、ほんとに、時間の無駄だよ。単に、からかって遊ぶためだとしても、わたしなんかを隣に置いてたら、彩芭くん自身の価値まで下げちゃうんだよ。もっと、ちゃんと、相手を選ばないと……」



