「これは、俺からきなこちゃんへ、きょうの記念のプレゼント」
実は、お手洗いを済ませて帰ってきてからずっと、不自然に背中へまわされていた手を、どうしたのだろうと不思議に思っていたのだ。
だけど、まさか、こんなものを隠し持っていたなんて、夢にも思わなかった。
「あと、テスト勉強つきあってもらったお礼も。古典、きなこちゃんのおかげで無事にパスできたから、ありがとうってことで」
「そんな……それは、彩芭くんが頑張ったからだよ」
「いいから開けてよ」
なにせ、こういうのにはうんと疎いから、印字されているブランド名もよく知らないし、だから、中に何が入っているのかも、ぜんぜんわからない。
だけど、いずれにせよ、いま、わたしがこれを受け取って、開けるなんて、とてもできそうになかった。
「……いいよ、こんなの、本当に、貰えないよ」
「中身、まだ見てもないのに、そんなこと言うわけ? しょうがねーなぁ」
呆れたように首をひねった彩芭くんが、手を伸ばし、紙袋の口元にくっついているテープを丁寧に剥がしていく。
やがて、彼の指先に連れられるようにして姿を現したのは、小さくて細長い、なんともお洒落なデザインの箱だった。
「じゃーん。リップスティックなんだけど、この色、絶対きなこちゃんに似合うと思って、一目惚れしたんだよね」



