「きなこちゃん、お待たせ」
それから、ひとりでいるあいだの数分間、崩れ落ちないで、椅子に座っているので、精いっぱいだった。
「……あれ、どうしたの」
顔を上げることさえままならず、小さくかぶりを振ることしかできないわたしに、彩芭くんが心配そうに首を傾げている。
「もしかして気分悪い? なんか合わない食べものあった? それとも暑さにやられちゃった?」
「ううん……、なんでもないよ。大丈夫」
埒の明かない応酬を続けるのは逆につらかったので、なんとか頭を持ち上げて、笑顔を作ってみる。
彩芭くんは、あまり納得いっていなさそうではあるものの、最後には「なんかあったらすぐに言って」と、うなずいてくれたのだった。
「あの、彩芭くん。ところで、そろそろお開きにしませんか……?」
「え、もう?」
「でも、だって、もう夕方だよ」
少し不服そうにしながらも、窓の外に目をやり、次にスマホで時刻を確認したのち、彩芭くんは再びわたしのほうへ視線を戻した。
「わかった」
少しの間を置いて、彼がそう返事をしたのと、ほぼ同時。
目の前に、小さな紙袋が差しだされていた。



