それでも、いつも通りの挨拶を返し、見慣れた道を並んで歩いた。

平静を装うのは、柊くんを困らせたくないからとか、そんなのじゃなく、ただ単に、わたしが臆病なだけ。


本当にうんざりする。

こんなだから、まだ告白してもいないのに、ひとりで勝手にふられちゃうんだな。


なんてことも、心の中で呟くしかない自分に、ほとほと嫌気が差したりして。


「なな、ずっと浮かない顔してるけど、大丈夫?」

「えっ」


学校のすぐ手前の横断歩道、赤信号に引っかかったのと同時に、柊くんが心配そうに顔を覗きこんできた。


小さい頃は同じくらいだったのに、いつのまにかうんと高くなってしまった身長を、こういうときは如実に体感してしまう。

しかも、彼はいつまでたっても3歳の頃の感覚が抜けていないのか、なかなかに顔が近い。


本当に、心臓に悪い。

少し日に焼けた肌も、すっと通った鼻筋も、目尻にかけて広がっていく二重の目も、わたしは、こんなにもちゃんと、男の子として意識しているというのに。