振られてよかったなんて。
心のどっかで思っているのかもしれないけど。
今の僕は確実に、同じように苦しくて。
だってさ、ほら「兄妹同然」だから。
「うぅ……っ……っ」
でも、君が僕のシャツを強く掴まえるたびに、
君の拠り所に少しはなれているのかなと、
少し嬉しくて。
いや、かなり嬉しくて。
「るい……ありが…と」
ボソッと小さく僕の腕の中でそう言った彼女の頭を優しく撫でる。
そして、きっと。
このかなり大きくて速い心臓の音は。
七瀬にもきっと聞こえてるよね。
聞こえててほしい。
知ってほしい。
「…七瀬が僕の前で泣いたの、初めて」
それが嬉しくて。
誰よりも今、七瀬の1番になれてる気がして。
彼女が少し落ち着いてから、僕は抱きしめるのをやめた。
「…はぁ?バカ。泣いてないし」
まつげをまだ濡らしたまま、彼女はプイッと横を向く。
あーあ。
そんなことをしても、やっぱりただ可愛いだけなのに。
「本当、素直じゃない。今日は七瀬の泣き顔記念日ね」
「ブッ…るい…ネーミングセンスなさ過ぎ!」
七瀬はそう言って、久しぶりに大口を開けて笑った。
これでこそ彼女だ。



