教室へ戻ってしばらくすると、昼休みが終わるチャイムが鳴り響いた。
小林の姿はまだない。
机の上に次の授業の用意を整えて、周りとの会話も特になく時間だけが過ぎていく。
やがて、次の授業の担当の教師が教室へやってきて、授業開始のチャイムが鳴る。
小林の姿はまだない。
学級委員長が号令をかける。
小林の姿はまだない。
担当教師が出欠を確認する。
小林の姿は…
「小林若菜はここにおります!」
ガラリと激しくドアを開けて教室に駆け込んできたのは、小林と書いてばかと読む馬鹿だった。
「…小林さん、ぎりぎり遅刻ですね。」
「待って!待って先生!間に合ったから!
出欠確認には間に合ったから!!」
「号令に間に合ってないからアウトだね。」
「そこを何とか!」
「残念でしたー。」
「ごっちゃん先生のいじわる。」
「後藤先生と言いなさいこのお馬鹿さん。
はい、さっさと座って。授業始められないじゃないの。」
古文担当のおばちゃん先生に笑顔で一刀両断され、何も言い返せずに自席へと向かう小林。
馬鹿だ。馬鹿としか言いようがない。

