キラキラしている人がいる



「あの、中田先輩…」



小林と話をしていると、後ろから声を掛けられた。


そういえば、呼び出しを受けていたのだった。

小林のせいですっかり忘れていた。




「あ、あぁー…あーうん。じゃああたしはこれで。」




輝いていたはずの瞳がただの黒になってしまったように見えた。



人間の目が光るわけがないから、初めからただの黒だったはずなのに。


そして気まずそうにその場から足早に去っていく後姿。

そっちには裏門しかないのだが、あの馬鹿はまだパン屋に行くつもりなのだろうか。



戻ってきたら買ってきたパンを取り上げよう。



「あ、あの、」



小林の後姿から目を離して、目の前に立つ小さな存在に目を向ける。



こいつは誰だ。



「た、中田先輩。あの、あたし、1年の原みずきと言います。部活で一緒なんですけど、分かりますか…?」




うちの高校は全員何かしらの部活に入らなければいけないという面倒極まりない決まりがある。


仕方なく俺も陸上部に入っている。

個人競技だから人との関わりもあまりなくて助かっている。



そして今目の前にいるこの女子も陸上部だというのか。

全く記憶にない。



「…悪いけど。」



「で、ですよね…私のことなんて、知らないですよね…

すみません!視界に入れるようになってから出直してきます!」




「え、あ、…えぇー…」



言いたいことだけ言っていなくなった女子。


なんだったんだあの勢いは。



去り際の走力から陸上部というのは嘘ではなさそうだということだけわかった。