キラキラしている人がいる




お通夜のような空気の中で行われた授業を終え、いまだに固い空気がぬぐえない中次の時間の準備をしていると、目の前に影ができた。




顔を上げればどこか落ち着かない様子の小林の姿。



教室中の視線がこちらに向いているのが気配でわかる。




空気がピリッと張り詰める。




「中田。さっきは…」



「思ったことを言っただけだ。お前に謝ってもらったところでどうでもいい。

この時間が無駄だからさっさと席にもどれ。」




俺は別にこんな空気を作りたいわけではないんだ。


俺がかかわると空気が悪くなるから普段もなるべく他人にかかわらないようにしているっていうのに、なんでこの馬鹿はわざわざ話しかけてくるかな。



さっきのでわかっただろうに。




「中田、ちゃんと聞いて。」



「…なんだよ。」




ここまで言っても話しかけてくるということは、何か大事な話なのだろうか。

俺はお前とする大事な話なんてないぞ。




「中田、昼休みはどうもありがとう。

これ、お礼の品です。献上します。」




そう言って小林が差し出してきたのは一つの袋。



「はぁ…これって…」


「買ってきたよ!」




なにが嬉しいのか、満面の笑みで俺に袋を差し出してくる小林。



俺はてっきりさっきの授業の一件でまた俺の認識を冷徹な鬼に改めたものだと思っていたんだけど。




「…本当に馬鹿。」



小林の手の中にある袋を受け取る。


中には揚げたパンに砂糖をまぶしてある甘そうなものが入っている。



これはあんドーナツだ。


これのどこが限定パンなんだ。

いつも売っているレギュラーメンバーじゃないか。




「外に出んのってダメなんじゃ…」


「受け取った中田も同罪だね!」




してやったりと言わんばかりににやりと笑う小林を見て、ため息とともに苦笑がこぼれた。