キラキラしている人がいる



「ごっちゃん先生…あの、あのですね、古文の教科書忘れたので、隣の人に見せてもらってもよろしいでしょうか…」



自席へとついて机の中のぞいた小林がおずおずと後藤先生の元へと向かうと、そんなことを言い出した。




「……どうぞご自由に。もう何も言いません。」




小林とあきれ果てた後藤先生のやり取りを見てクラスメイトからはクスクスと笑いが起きる。




「小林ー小学生みたいだなー」


「うるさいよ!人間だれしも忘れ物することだってあるでしょうよ!」


「だとしても事前に借りとけよ。」


「それはその通りだから言い返せません!」


「馬鹿だなぁ!」




「先生!みんながやかましいです!」


「あなたが一番やかましいです。早く座りなさい。」



「ごめんなさい!」





ひときわ笑い声が大きくなる。





「うるせーよ馬鹿。」



つい俺も口を出したくなってしまい、一言。





とたんに静まり返る教室。




先ほどまでも笑い声は空耳だったのではないのかと疑いたくなるほどの静寂。



クラスメイトと先生の視線が小林ではなく俺に向けられる。



俺は教室で冷徹な鬼と認識されているんだっけ。




「た、中田くん、そ、そうですよね。授業を、始めます。ほら、こ、小林さんも早く座って。」




教師のくせに生徒に対してここまでビビるのはどうかと思うが、俺の態度がそうさせてしまっているんだからどうしようもない。



俺としては普通の顔で普通のことを言っているだけなんだけどな。