夕焼け空の下、河川敷。

原っぱに足を投げ出して、こうして航さんが一緒にいてくれる時間は、私には現実には思えない。
とても特別な、誰にも邪魔されたくない時間だ。

「暗くなるの早くなったよな」

航さんが起き上がるとウィンドブレーカーが、シャリ、と冷たい音を立てる。
確かに風もひやりとしているし、夕陽も落ちて薄暗くなってきている。そんな空に雲が浮かぶ。

ここは、いろはちゃんの散歩の場所だったらしい。


地面についている小篠さんの手。手首の筋が見えて、チープな腕時計が付いている。

「かわいい…時計」

「これが?」

航さんは、私に腕を差し出した。
筋張った手首に絡まった黒い時計。

手を伸ばせば届く。

「…………触っても、いい?」

「……いーけど」

「あーっ、違うの」

「へ?」

腕時計を外そうとする航さんを止め、ぎゅっと手を握った。思ってたより柔らかい、てのひらの温度が私の手に伝わる。
震えてしまいそうなぐらい緊張して、顔が見られない…