あれから数日経った。
私は今でも普通にこう先輩と話している。
あの日、先輩が元カノのことを話してくれた後……
「そう、だったんですか」
「そんなしんみりしなくていいんだよ」
「すみません……あ、家ここです」
「へぇ……綺麗な家だね」
「前まで近くのマンションに住んでたんですけど、2年前に家建てて引っ越したんです」
「そっか、だからこんな綺麗なんだね」
「……あの、送ってくれてありがとうございました」
「当然のことだよ。もう暗くなってきてるのに女の子を1人で帰すわけにはいかないでしょ?」
ほら、まただ。
優しすぎるんだよ、先輩は。
嫌でも少しは期待しちゃうじゃん……。
ちょっとは私のこと、好きでいてくれてるんじゃないか、って。
「……ミナ」
「はい……?」
「俺は……ミナと付き合うことはできない。でも、大事な後輩だ。これからも今まで通り仲良くしたいんだ……。迷惑なら、断ってもらっていい。……これからも、俺と話してくれる?」
「……いいん、ですか?」
「うん!……ミナと気まずくなるのは嫌だから」
「私も、先輩と気まずくなるのは嫌です」
「そっか……ありがとね」
こんなことがあって、この次の日からまた、何事もなかったかのように過ごしていた。
