「じゃあ私、仕事戻るから。生活の記憶はあるんでしょ?じゃあ一人で出て行っても問題ないわよね。家出るならこれ、鍵とあんたの財布。お金は入ってるから。後は………、あ、携帯ね。使い方分かるでしょ?ロックはかかってても私番号知らないから。じゃ、そういうことで」
机に鍵と財布、携帯を置いて玄関に向かってそそくさと行ってしまった。
「あ、一週間は帰ってこないから。あの人も多分帰ってこないと思うけど、家に男の人がいたらその人が父親だから」
捨て台詞だけ吐いて出て行ってしまった。
今の数分の出来事だけでこの家の感じが分かった。
私は愛されて、望まれて生まれてきた子ではないと。
あんな大雑把な説明で何をしたらいいのか分からない。
そもそも私は何をして毎日を過ごしていたのだろうか。


