辿り着いたのは社会科準備室。 部屋の窓を開け、窓枠に手をついて大きく深呼吸をしている。 そんな彼の横をすり抜け入ってきた風は温かく、優しい風だった。 「じゃあ自己紹介しよっか」 振り向いたと同時に私を視界にとらえた。 「俺は美波和樹(みなみ かずき)。担当科目は現代社会。後は……」 黒の短髪で、紺色の縁の眼鏡。 男の人のくせにパッチリ二重。 白のワイシャツに目立つ緑色のネクタイ。 捲ってる袖からは男らしい逞しい腕が見えている。 そんな彼は自分の名前と現代社会の教諭と自己紹介を始めた。