幸い、翌日の土曜日は榊田君は友達と出掛けるとかで、夕食会はなかったし、次の約束も交わしてなかった。


 夜に日曜日の予定を尋ねるメールが来たけども、用事があると断った。


 一人で考えたかった。


 キャスター付きの椅子を手持ち無沙汰にくるくる回していると、仁くんに言われたことが、くるくる頭を回る。


 榊田君に対する想いは恋なのだろうか?


 結局、二日一人で考えたが答えは出ない。


 知恵熱が出てしまうくらい思い悩んだ。


 こんな気持ちのまま、榊田君と一緒にいることはできなくて、彼との夕食は断り続けた。


 彼は、探るような目で私をしばらく見たけど、わかった、と何も言わずに引き下がってくれた。


 そんなことを毎日繰り返しながら、自分の中で漠然と答えが出た。


 やっぱり、榊田君のことが好きだ。


 彼に感じるのも恋だ。


 だけど恋であっても、仁くんとは違う。


 彼への恋は、拠りどころを失いたくないという私の弱さだったり、虚栄心を満たすものからはじまったものだ。


 仁くんを好きになったきっかけなんて覚えてないけど、打算もないまっすぐな純粋な想いだった。


 榊田君が私を好きだと言っていなかったら、私は彼に恋したのだろうか?


 たぶん、恋にならなかった。


 ずっと、友人として好きなだけだった。


 そんな考えに至って、やっぱりもう決着をつけようと思った。


 榊田君に嫌われるだろう。


 好きだから待っていて、って言っておきながら振るのだから。


 それでも、早いうちが良い。


 私みたいな勝手な人間じゃなくて、彼にはもっとふさわしい人がいる。


 なら、どんな風に思われても、はっきりと伝えなければ。


 それでも、言葉が浮かんでこなかった。


 榊田君の顔を見ると言い出せなかった。


 それは、彼を傷つけること躊躇しているというより、彼に嫌われたくないという私のわがままから。


 彼への恋心が、私に躊躇させている。


 そんなことをしているうちに、二週間があっという間に経った。