「確かに、榊田君が考えなしで女性の家で二人きりになるとは考えにくいね。でも、何が目的かは私もさっぱり。もしかしたら、単に静かな場所で打ち合わせしたいだけかもよ?」



「小春ちゃん!彼氏が他の女の家で二人きりなのに何でそんなにのん気なの!?榊田君があっさり紗希の誘いに乗ったんだよ!」



 確かに浮気を疑われても不思議はない。


 彼は敏いから、その辺りを認識しているだろう。


 それでも彼が彼女の家に行きたがる理由とは何だ?



「榊田君はわが道を行くタイプだし仕方ないよ。それに、一般的な男の子とは感覚が違うから」



 なんせ、百人中九十九人が紗希さんのほうが魅力的と答えるだろうに、彼はその九十九人には入らない、変わった人だから。


 他に入らない人と言えば、お父さんと仁くんくらいなものだ。

 生きていたらおじさん、仁くんのお父さんも私に一票を入れてくれただろう。



「小春。榊田も男よ。黙認するなら最悪な事態想定しておきな。何たって紗希が仕掛けてきたんだからね」



 朔ちゃんは苛立つようにノートで私の頭を叩いた。
























「明日は一緒に食えるか?小宮山と打ち合わせするから夕飯だけになるが」



 金曜日、彼の家でご飯を食べていると彼がいつも通り尋ねてきた。


 昨日は榊田君が広君たちと飲みに行くとかで夕食会はなかったから、亜里沙ちゃんから話を聞いた後、顔を合わせたのがこれが初めて。


 だから、この一件について聞く機会はなかった。



「発表、日曜日だったよね?まだ終わってないの?」



「パワーポイントがまだ未完成でな。あいつのパソコンに搭載されてるから助かった」



 何だ、そういうことか。


 大学のパソコン室は土日は空いてない。


 だから、紗希さんの家で仕上げるわけか。



「何時頃になる?」



「七時には水野の家に行く」



 それなら八時近くと見ておいて良いだろう。



「明日は日曜日のプレゼンが上手くいくように、卵焼き作るから最後頑張ってね」



 彼はご飯茶碗を私に差し出して、大きく頷いた。