夏樹君と教室を出た後、夏樹君はなぜか、私を外靴に履き替えさせた。
夏樹くん、どこへ行くの?
そんな意味を込めて、繋がれた手を軽く引く。
「あぁ、行ってからのお楽しみってことで!」
な、なんじゃそりゃ……。
目をパチクリさせると、夏樹君は私の頬に手を伸ばして、そっと触れる。
そして、乾いたばかりの涙の跡を指先でなぞり、満開の花を咲かせるように微笑んだ。
「すぐに、笑顔に変えてやんよ」
「っ……!」
真夏の日差しのような強く不敵な笑みに、心臓が大きく跳ねた。
また、この笑い方だ……。
夏樹君は、ふいに私をドキッとさせるような笑みを浮かべる。
その度に毎回心臓がおかしくなりそうで、困るんだ。
「そんじゃ、突入すんぞ」
……突入、どこへ!?
夏樹君は私の手を握りなおすと、驚いている私をお構いなしに、突然駆け出した。


