春が来たら、桜の花びら降らせてね


「わかりました、原田さんはもう座りなさい……。代わりに貝塚くん、23ページ5行目から読んで」

「はーい、先生」

席に座ると、誠くんが代わりに朗読する。
みんなに、ありがとうって言いたい。

私の代わりに伝えてくれた言葉の一つ一つが、泣きたいくらいに嬉しかったって、伝えたかった。

今ほど、みんなと同じ人になれたらと願ったことはないと思う。

「ん……?」

無意識に夏樹君を見つめると、視線に気づいた夏樹君が私を見た。

「あっ……っ」

こんな時、お礼の一つも言えないの?
そんな自分が嫌になって、うつむきかけた時、夏樹君がフッと笑った。

え……?
どうして笑ったのか、驚いていた私はすぐに理由を知る。

「……どういたしまして」

「っ!!」

耳に届いた、声なき声の返事。
それに、せき止めていたものがすべて崩壊した。

目から温かい何かがぶわっと溢れ出る。
なんだこれと、指で目元に触れれば、しっとりと濡れていた。