「先生、朗読なら俺がやりますよ」
斜め前に座る誠君が、私を振り返って、ニコリと笑った。
誠君まで……。
胸に、じんわりと温かさが広がる。
「冬菜ちゃん」
今度は前に座る琴子ちゃんが振り返って、私の袖口を引っ張った。
「もう座って大丈夫!あとは誠君がやるから、ね?」
「あっ……」
どうして……こんなはずじゃなかった。
小学校、中学校の時も私を喋らない変人だと、遠ざける人たちばかりだった。
だから、高校でも当然、遠巻きに見られるのがあたりまえだって、諦めていたのに……。
私を、ひとりの人として見てくれる。
表面上の仮面に騙されず、理解しようと心をのぞいてくれる。
そんな人たちがいるんだってわかったら、信じてみてもいいのかなって期待してしまう。


