「ねぇ、今日こそ原田さん話すとこ見られるかな?」
「無理だろ、頑なに喋んねーじゃん」
「確かに!」
「あたしは、話すに一票!」
クラスのみんなが、勝手に私ことで盛り上がっている。
まるで、見世物小屋にでもいるような気分だった。
他人事だから、そんな風に笑えるんだ。
声を失うことが、どれほど生きづらいかを知らないから、平気で陥れようとできる。
ううん、知っていたとしても、人は残酷な生き物だから、肩身狭い思いで、日陰を生きていく人間でさえ、平気で傷つける。
「私が教育実習生だからって、ふざけないで」
そんなんじゃ、ないのに……。
先生は私がバカにしていると思ったのだろう、眉を吊り上げて静かな怒りを向けてくる。
「読むまで、ずっと立たせますよ」
「……あっ……」
お願い、今だけでいいから、声出てよ!!
「なんか、小学生みたいだよね」
違うの……。
「なんで、そこまで言われて喋らないんだろう。反抗するのがカッコイイとか思ってるのかな」
違うんだよ、話したくても、声が出ないんだよ。


