「ほら、リュウ坊も冬菜のこと待ってんぞ」

夏樹君の声に私はコクンッと頷いて、リュウ坊を抱きしめる。

今日も私は、君の心を騙す嘘に、騙されたフリをする。

「なぁ冬菜、楽しいか?」

楽しい……。
そう思うこと自体が久しぶりで、自分の気持ちがはっきりわからない。

けれど、夏樹君がくれた放課後からの数時間。

それは、いつもの変わり映えのしない見慣れた毎日とは違って……。

そう、まるでネバーランドに来たみたいに、世界が色づいて見えた。

世界が、キラキラと魔法みたいに輝いて見えた。

『夏樹君は、ピーターパンみたい』

「ピーターパン……俺が?」

『夏樹君と一緒にいると、胸にドキドキとワクワクが溢れてくるんだ』

気づけば、そう文字を打って夏樹君に見せていた。

今、私の感じている気持ちに、答えが欲しかったからかもしれない。