春が来たら、桜の花びら降らせてね


「お、わかってんじゃん。俺も犬が一番好きだ」

好き……。

──ドキンッ。
もちろん私に向けたものじゃないことは、わかっている。

ただ、胸がザワザワする。

『私の家、犬を飼ってるの』

それを誤魔化すように答えた。

「え、初耳だわ、何犬?」

『チワワとプードルのミックス』

初耳って……誰にも話したことないからね。

自分のことを話すのは、なにもかも夏樹君が初めてだった。

夏樹君相手だと、強がりで固めた鎧も簡単にはがれて、自分のことを自然に話してしまう。

「そんなミックスあんのか!え、写メねーの、見てぇ!」

乗り気で話を聞いてくれる夏樹君に、私との会話を楽しんでくれてるみたいで嬉しくなった。

夏樹君もペットショップで働いてるくらいだし、犬が好きなのかな。

『うちの子、ベリーっていうの』

興奮する夏樹君に、私もウキウキしながら、愛犬ベリーの写メを見せた。