「冬菜、好きな子指名していいぞ」
夏樹君はガラスケースを指さす。
私は食い気味で強く頷いて、さっきから気になっていたチワワを指さした。
「お、リュウ坊か」
……リュウ坊??
夏樹君はチワワを見て確かにそう呼んだ。
「こいつさ、物覚えはいいのに、小屋が変わったりすると、何も出来なくなんの。この融通の悪さが琉生にそっくりで……いてぇ!!」
「お前の口の悪さを、恨むんだな」
「だからって、頭殴ることねーだろ!!」
涙目の夏樹君に、凄む琉生君。
テンポのいい掛け合いが、お笑いを見ているようで、笑いがこみ上げてくる。
どうしよう、このふたり面白い。
「ふっ」
つい、歯と唇の隙間から噴き出すように息が漏れた。
夏樹君が私の顔を見て、目を見張る。


