春が来たら、桜の花びら降らせてね


「あー、なんとなく状況は理解した。改めてよろしく、冬菜ちゃん」

差し出された琉生君の手に、自然と体が強張る。

落ち着け、落ち着け、落ち着け……!

「うっ……」

せっかく、握手を求めてくれてるのに、なんで動けないの……!

そんな自分に苛立って、洪水のように悲しみが溢れてくる。

このまま海になり、沈んでいってしまいそうなほど、溺れる。

「よし、よろしく!」


そんな私を悲しみの海から掬い上げてくれたのは、夏樹君の声だった。

夏樹君を見れば、私の代わりに琉生君の手を握っている。

「……は?」

琉生君は素っ頓狂な声を上げた。

え……何してるの、夏樹君。
夏樹君の謎の行動に、私と琉生君はポカンとしてしまう。

「夏樹、この手はなに?」

「なにって、握手だよ」

「夏樹と握手してる理由を、俺は聞いてるんだよ」

「細かいこと気にすんなって、禿げあがるぞ」

「余計なお世話だ」

なんか、このふたりって……。
会話がつくづくかみ合ってないような。

それも主に夏樹君の返答が変化球かつ、斜め上を飛んでいくせいだ。