「夏樹どうした、今日は休みだろう?」
ふいに声が聞こえて、私は顔を上げる。
「あ、琉生(りゅうせい)。今日シフト入ってたんだな。今日はプチ動物園を観光しに来たってところだ」
夏樹君に声をかけたのは、サラサラな黒髪にキリッとした目元が知性を感じさせる、端正な顔立ちの男の子だった。
『わんにゃんクラブ』と書かれたピンクのエプロンをつけており、夏樹君のバイト仲間だということがわかった。
それが可愛らしくて、大人っぽい琉生くんとはギャップがあった。
可愛い……だなんて男の子に失礼だよね。
夏樹君と同い歳くらいかな、タメ語だし。
知らない人の登場にソワソワしている私をよそに、ふたりは会話を続けている。
「ここペットショップだぞ。動物園にするなよ、勝手に」
「気持ちの持ちようで、人はどこにでも行けんだよ」
「なんの話だ、なんの……」
呆れている琉生君を無視して、夏樹君はレジ裏の棚からエプロンを取り出した。
「抱っこすると、制服に毛ぇつくから、これつけてな」
「あっ……」
夏樹君が、スポッと私の頭からエプロンを被せる。
男の子にこうして世話を焼かれるのは、まるで自分が幼い子供にでも戻ったようで、居心地が悪い。
ただ悪いのではなく、嬉しい、甘えてしまいたいと思ってしまうから、恥ずかしいのだ。
夏樹君はただエプロンをつけてくれただけなのに……。
私、なにドキドキしてるんだか。


