春が来たら、桜の花びら降らせてね



「なんで、このネジの飛びっぷりが愛くるしいじゃない」

「……そうか、お前も落としたのか、頭のネジ」

なのに、誠君は相変わらず琴子ちゃんを溺愛していて、夏樹君との会話は一方通行だった。

それを遠目に見つめながら、なんだかフリーダムな人たちだなと思う。

夏樹君が普通の人に見えてくるあたり、相沢さんと貝塚君がいかに個性的なのかを思い知らされた。

「とにかく、琴子のことは琴子ちゃん」

「俺は誠ね」

「「リピートアフタミー?」」

ふたりの声が、双子のように見事にハモった。

呆然と立ち尽くしていると、夏樹君の手がポンッと私の頭に乗る。

触れた体温に、心臓がドキリと静かな音を立てて跳ねた。

「面倒だから、適当に頷いとけ、面倒だから」

面倒って、2回言った。
とりあえずここは、夏樹君の言う通りにしようと、ふたりに頷いたのだった。