「まだいっぱいあるぞ」
「むぐぐ……」
そんなにたくさん入れないで……っ。
口の中にチョコレートを数個入れた夏樹君。
口の中ゴロゴロするし、か、噛みにくい……。
下手したら口が開いてしまいそうで、そんな醜態をさらさないように必死に口内の体温でチョコレートを溶かす。
「ぶはっ、モグモグしてんの、リスみてー」
「むぐ……」
誰のせいだと思ってるの。
膨らんだ頬をツンツンと指で押され、ムッとする。
私、夏樹くんに遊ばれてる?
「なぁ冬菜」
「ん……?」
急に改まって名前を呼ばれた。
それを不思議に思いながら、見つめ返す。
数分前まで向日葵のように太陽を見上げていた夏樹君の頭が、だんだんと萎びるように垂れてくる。


