「ったく、探しただろ」

夏樹君だった。
座っている私を見下ろす夏樹君は、肩を上下に揺らしている。

背にしてる太陽のせいなのか、困ったように笑う笑顔のせいなのか。

夏樹君自身が優しくふんわりと輝いているように見えて、その眩しさに目を細めた。

「あ、サボって読書か?それだと俺が暇になっから、これは没収な」

「あっ!」

手から本を取り上げられて、代わりに夏樹君が私の隣に座る。

腕が、身動きするたびに当たる距離。

こんなに近くに座る必要ある?

心臓が、ざわざわする。
なんだろう、むずがゆいような、落ち着かない。

「俺さ、非常食持ってきてんだけど、こっち向いて」

そう言った夏樹君は、唐突に私の顎を掴む。

……え?

何事かと呆けて開けっぱなしになっていた私の口の中に、夏樹君は何かを放り込んだ。


「んっ!?」

この口の中で溶けていく、甘くてたまに酸味のある濃い物体。

その味に覚えがあり、私は瞬きを繰り返す。

これは……チョコレート?

しかも、夏樹君に似合わない、可愛らしいイチゴ味。