「冬菜、どこ行くんだよ!?」

私がどこに行こうと、関係ないでしょ?

腹が立つ、だから誰かと関わるのは嫌なんだ。 
お願いだから、もう傷を抉らないで……っ。

「冬菜!!」

夏樹君が呼び止めたのが聞こえたけれど、私は振り返ることなく教室を出て屋上へと向かった。


一限目から授業をサボってしまった。

本を持って来たのに、ここへ来てからページは進んでいない。

フェンスを背にして座り、羅列する文字をただボーッと見つめているだけだった。

さっきはあんなに心動かされた本も、今では何も感じない。

なにも、感じたくなかったのだ。
まだ、あんな言葉一つで傷ついてるだなんて、認めたくない。

──キィィィッ。

ふいに、錆びた鉄が擦れるような独特の音が耳に届いた。屋上の重たい扉が開いたのだとわかり、私は振り返る。


「冬菜っ、良かった、ここにいたのか!」

どうして……来たの?
私が言うのもなんだけど、今は授業中だ。

少し息を切らせながら、そばにやってくるの君を、私は呆然と見上げる。