春が来たら、桜の花びら降らせてね


「俺、小6のあの時、俺とは真逆の道を進む冬菜の背中を振り返ったんだ」

「っ、え……」

夏樹君の言う『あの時』が、もう二度と何も望まないと決めたあの日のことを言っているのだとすぐにわかった。

知らなかった……。

君は私の事なんて、微塵も想っていないと思っていたから。でも、あの時君は、私のことを振り返ってくれていたんだ。

「あの時から、冬菜のことが忘れられなかった。俺がこの子の世界を真っ黒に変えてしまったんだって、自分が汚い生き物に思えたんだ。だから、俺に太陽が似合うだなって間違いなんだよ」

「あっ……」

その頃から、夏樹君は罪という傷を抱えて生きて来たんだ。

自分を蔑む痛みは、私が一番理解できる。
私も他の人とは違うからと、自分を否定して生きてきた。

それは生きているのか、死んでいるのかもわからない、暗闇の世界にいるようで……孤独だった。

誰にもわからない、理解なんてされるはずがない。

されたいと思うのに、幻滅されるのが嫌で、誰にも打ち明けられないから孤独なのだ。

そんな孤独から目をそらすように、夏樹君は明るくて真っすぐな人を演じたんだろう。

その胸のうちに、どれだけの疼く悲しみと苦しみがあったとしても。