『だから、私は夏樹君にさよならを伝えに来たの』
そう言った今も、迷ってばかりで……。
本当の気持ちに気づかないフリをして、俯きながらそう伝えた。
すると、不意に夏樹君の気配が動いた気がして、反射的に顔を上げる。
「冬菜、俺たちは確かに正反対の道を進んできたよな」
いつの間にか、目の前に真剣な顔をした夏樹君が立っていた。
夏樹君が……こんなに近くにいる。
こうして、至近距離で目が合うのは久しぶりだった。
もう随分と、君と離れていた気がする。
「ぁ……」
トクンッと、心臓が鳴る。
好きな人に対して自然と体が、心が反応してしまう。
それを必死に、心の中で否定することは辛かった。


