「あたしはずっと、佐伯を見てきたの。だから、絶対にあんたになんか渡さないから」

それだけ言って、園崎さんは踵を返す。

「…………」

その背中を見てわかった。
園崎さんは夏樹君のことが好きなのだ。

だから当然、好きな人を傷つける私のことが許せなかった。

「私……」

園崎さんの姿が完全に見えなくなって、呟く。
踏み出さなきゃいけないことはわかってた。

このままだと、私という存在がみんなを不幸にしてしまう。

「好きな人も、その周りの人も傷つけるのくらいなら……」

もう、終わりにしなくちゃいけないよね。
痛くても、傷ついても君に……。

「さよならって……言わなくちゃ……っ」

自分で言ったのに、泣きそうになるのは……夏樹君への恋に、未練があるからなんだろう。

それでも、誰かを傷つけるのも、傷つけられるのも、もう終わりにしたいから。

あぁ、本当に君が好きで……大好きだった。
目が熱くなり、滲んだ涙が頬を静かに伝っていく。