「本当に、ムキーッて感じだよね!」

「琴ちゃんの言う通りだよ、食欲が失せるね」

誠と琴子は人懐っこくて、めったに人を嫌わない。そんなふたりが園崎をよく思わないのは、相当なことだ。


「ねぇねぇ、ふゆにゃんとはあれから話してないの?」

「……話なんて、出来る状況じゃなくてさ」

俺は琴子にそう返事をして、机に項垂れるように突っ伏した。

目を閉じれば黒色一色。
そこには闇しかなかった。

冬菜がこんな暗闇の世界にひとりでいるのかと思うと、胸が締め付けられる。

世界はもっと光に溢れていて、色があって、温かいのに。

悲しみしかしらない冬菜を、俺は救ってやりたかった。

なんて、奪っておいて何様だよって感じだけど、この数年間ずっと君の幸せだけを願って生きてきたんだ。

「ふゆにゃんに逃げられてるのは、俺たちもだよ」

誠の寂しそうな声に目を開ければ、琴子と一緒に暗い顔をしていた。

それに、このふたりにとっても冬菜が特別な存在なんだとわかった。